・社会課題解決に向けた事業を展開しているが、一部の社員しか「自分ごと」と感じていない
・サステナビリティの重要性を社内に浸透させ、CSV経営(事業を通じて社会課題を解決する経営)を実現しなければ、企業として持続的な成長は見込めないという危機感がある
・サステナビリティに関して、インプットだけではなくアウトプットもセットになった研修を探していた
・サステナビリティ研修の基礎編と実践編を行い、社内浸透が促進された
・研修参加者は、自社の事業とサステナビリティを関連付けて考えられるようになった
・社会課題を起点とした発想(アウトサイドイン)や、バックキャスティングの考え方が理解できた
・グループ会社全てのリソースを組み合わせ、新規事業のアイデアを生み出す土台ができた
株式会社ユニリタ様(以下、ユニリタ様)は、1982年に創業し、システム運用やデータ活用領域におけるITサービスの開発・販売・サポート・コンサルティングを行う企業です。IT企業として、IT活用による社会課題解決はミッションであると考えています。あらゆる業種・業界にサービスを提供してきた強みを生かし、よりよい社会システムを実現しようとするお客様企業を最新のテクノロジーでサポートしつつ、自らも新しい事業の創出に取り組んでいます。
2024年に発表した中期経営計画では、CSV経営推進のもと、サステナビリティの考えを経営戦略へ組み込み、社会と企業の双方のサステナビリティに対し、質の高い貢献を果たすことを重点戦略として掲げています。
ユニリタ様には、中期経営計画の達成に向けて、社員一丸となってサステナビリティに取り組んでいこうという強い志があります。また、そうしなければ企業として持続的な成長はないという危機感もあるといいます。全社員にサステナビリティを学んでもらい、「未来のあるべき姿」から逆算して、自社が行うべき喫緊の課題をバックキャストで考えられる人財を育てたい、そのための研修を実施したいと考えていました。
依頼を受けた、グリーゼは2023年度にサステナビリティ研修の基礎編を実施。2024年度は基礎編も継続しつつ、実践編も実施しました。その経緯や効果について、同社の金子様、佐々木様、鈴木様に伺いました。
金子 紀子様
取締役 上席執行役員 コーポレート業務本部長佐々木 さおり様
コーポレート業務本部 人財戦略部 人財開発グループ鈴木 愛様
コーポレート業務本部 人財戦略部 人財開発グループ※部署名・役職は取材当時(2024年7月)のものです
金子:
ユニリタでは10年以上前から、主に3つのアプローチで社会課題解決に向けた事業を展開しています。
①社会課題解決に取り組む企業をITでサポート
②農業×IT(農業経営支援クラウドサービス「ベジパレット」)
③地方創生×IT(地域活性化のために移動体事業データを活用)
ただ、①は社員が社会課題を「自分ごと」として捉えにくく、②と③は一部の社員しか関わっていないという課題があります。また、中期経営計画の達成のためにも、サステナビリティに対する意識を社内浸透させる研修を行いたいと考えていました。
ユニリタの人財育成は「インプット&アウトプット」の方針で行っています。例えば、新入社員はマナー研修の後で必ず営業担当に同行させて、実際のお客様のところを回ってもらうようにしています。学んだ内容を身に付けるにはアウトプットが大切だと考えているからです。サステナビリティ研修も、自社の強みと関連させて製品・サービス開発のアイデアを出す段階までやってほしい、座学だけでは「他人ごと」のままで終わってしまうと考えて、アウトプットができる研修を探していました。
ゲームを活用したサステナビリティ研修があることは知っていたので、その形式がいいのではないかと考えていました。でも、ゲームの内容まではわからなかったので、詳しい知人に相談しました。そして紹介してもらったのがグリーゼです。グリーゼにいくつかのゲームの体験会をやってもらったところ、参加した役員や、人事部の部長からの評価は上々。この形式で実施しようと決めました。
グリーゼに依頼した決め手は、研修内容に納得できたからです。ゲームを行ってから振り返りと座学を行う研修なら、頭に入りやすい。ユニリタの考えや、やりたいことを丁寧にヒアリングして研修をアレンジしてくれたのもよかったですね。
参加者はチームに分かれ、さまざまなプロジェクトを実行しながら、地域の「人口・経済・環境・暮らし」を考え、持続可能な町づくりを行う。
2023年度は東京で8回、大阪で1回実施。2024年度は東京で4回実施予定。
鈴木:
基礎編ではカードゲームを通して、日本のどこかで実際に行われているSDGsプロジェクトを知ることができます。サステナビリティという言葉は知っていても、具体的な取り組みはイメージできていなかったという参加者も多いのですが、研修を通して「こんなことがサステナビリティにつながっているんだ」と気付いてもらえました。参加者の満足度は高く、「楽しかった」という感想を多くいただきました。
佐々木:
基礎編は、グループ会社も含めた約700名の社員全員に受講してもらうことが目標です。すでに200名を超える社員が受講しました。金子は中期経営計画を通して、企業として意欲的にサステナビリティに取り組んでいくという意志を社員向けに発信しています。多くの社員が基礎編に参加したことで、そのメッセージの意味が社内浸透したのではないでしょうか。
うれしい誤算としては、普段は関わりの少ない社員同士が交流する場にもなりました。最初に、SDGsの17のゴールの中で何に興味があるかという「SDGs自己紹介」をしてもらうので、どんなことに興味を持っている人なのかがわかり、業務とは違う一面が見られるのもいいですね。「SDGs de 地方創生」のカードゲームは、自分のチームだけがプロジェクトを成功させればいいのでなく、地域全体を発展させなければいけません。そこに気が付いた参加者は、他のチームのプロジェクトにも積極的に協力してくれるので、一体感が生まれました。
参加者はチームに分かれ、社会課題を起点とする「アウトサイドイン」の視点で新たな事業を創造し、事業の認知・拡大を目指す。
カードゲームの結果を踏まえて、社会課題と自社のリソースを掛け合わせ、どのような新規事業を生み出せるか考える。チームごとに、新規事業のアイデアを発表する。
2024年度は東京で7回、大阪で1回実施予定。
金子:
2023年度に基礎編を開催して、サステナビリティへの取り組みが重要だという意識を持ってもらえたと感じました。2年目となる2024年度は、より具体的に「自社のリソースを使って社会課題解決のために何ができるのか」を考えてもらう研修を実施したい、この考えをグリーゼに相談したら、すぐに実践編のプランが出てきました。プレゼンテーションしてもらって納得したので、実践編も依頼しました。
鈴木:
普段の業務で新規事業のアイデアを考える場が全くないわけではありませんが、研修で「社会課題を起点にする」という切り口を提示すると、さまざまなアイデアが出てくることがわかりました。参加者へのアンケート結果でも好評価が多く、「ゲーム感覚で考えるとアイデアが出る」や、「自社の持つリソースを使って解決できそうな社会課題が意外と多いことに気が付いた」といった感想が出ています。
佐々木:
ユニリタには、国内だけで8社のグループ会社があります。社員は自分が所属している会社以外のグループ会社についてあまり知る機会がなく、連帯感や一体感が生まれにくいのが課題でした。そこで2023年度に、各グループ会社の事業内容や強みを社内向けに紹介するショート動画を作りました。それが実践編の内容とうまくマッチしました。アイデア創出ワークショップで自社のリソースがどんどん出てきて、大いに盛り上がりました。グループ会社間の連携を意識し、自社の強みの再認識にもつなげられた点がよかったと思います。
2024年度の新入社員研修の中で、サステナビリティに関する約6時間の研修を実施。
グリーゼは、基礎編と同様の「SDGs de 地方創生」カードゲーム、座学、ワークショップを担当。ユニリタ様の経営戦略本部役員による、経営戦略とサステナビリティの関連や、社会課題の解決に向けた事業についての解説を追加。
金子:
サステナビリティに関する知識は、社会人の一般常識として身に付けてほしい内容なので、新入社員研修でも実施しました。基礎編で意識を高めた後なら、ユニリタの経営戦略やサステナビリティへの取り組みを「自分ごと」として理解してもらいやすくなりますし、モチベーションやエンゲージメントの向上につながります。新入社員同士の距離を縮めるのにも効果的だったと考えています。今後も、新入社員研修の中にサステナビリティ研修を盛り込んでいきます。
最近は、採用面接で「ITで社会課題を解決したい」と言う学生が多いので、学生時代からサステナビリティの意識が根付いていると感じています。学生に選ばれる企業になるためにも、サステナビリティに取り組み、それを発信していくことは重要ですね。
2024年度の経営層研修の一部として、実践編と同様に、「SDGsアウトサイドイン」カードゲームと新規事業のアイデア創出ワークショップを実施。
金子:
サステナビリティ研修を2023年度からスタートしたものの、会社の経営層がどれくらい共感してくれているのかは把握できていませんでした。社員がどのような研修を受講していて、どのようなことを考えているのか、経営層にも知っておいてほしかったので、経営層研修の一部として実施しました。結果、研修が終わってもホワイトボードの前でディスカッションを続けた人たちがいたくらい、大好評。ゲームのことや、サステナビリティに関することなど、次から次へと講師への質問が出てきました。サステナビリティに対する意識が共通していることを確認できたのでよかったです。
鈴木:
基礎編は、サステナビリティの話題が身近にあることを感じ、意識してもらうきっかけとなりました。カードゲームを楽しむだけではなく、後半の座学でしっかりと知識を習得してもらえる構成になっているのがよかったです。座学では「SDGsの本質」といった基礎知識から始まって、企業としてサステナビリティに取り組むことでどのようなメリットがあるのか、具体的な事例を交えた説明で、参加者の理解が深まったと思います。
実践編では、アウトサイドインの考え方を身に付けてもらうことができました。CSV経営を実現するためには、社員に「ビジネスとサステナビリティは両立できる」と気付いてもらう必要があります。参加者アンケートでは「社会課題解決はビジネスを度外視するイメージだったが、両立させていく必要があると学んだ」という感想があったので、研修の効果が出ていると実感しています。基礎編・実践編のどちらも、楽しみながらサステナビリティを学べて、チームビルディングにも役立つ研修でした。
佐々木:
基礎編から実践編へと段階を踏んだことで、社会課題の解決に向けて新規事業のアイデアを生み出す土台ができたと思っています。基礎編と実践編を同じ日に実施するのではなく、間隔を空けたのがよかったですね。基礎編の内容を消化して、自分の身の回りにどのような社会課題があるか、どうやったら解決できるか考える時間を作れたからです。参加者にとって負担がない構成になりました。
金子:
ユニリタは2027年度までに、現在展開中の社会課題解決の事業以外に、社会課題解決の事業が最低でも1年に1件は立ち上がるようにすることを目標に掲げています。そのスタートに重要なのが、グループ会社を含めた全社員がサステナビリティの基礎知識を習得して、共通言語で会話できるようにすることです。基礎編と実践編は各自の都合のよいタイミングで受講してもらえるように、これからも継続的に開催していきたいと考えています。
また今後は、実践編で出たような社会課題解決のアイデアを実際に事業化するために、どうしたらいいかを本格的に考えるプログラムも必要だと感じています。いわば、実践編の次の段階です。そこまで行って初めて、自社のリソースで社会課題を解決するというテーマに対して一通り取り組んだと言えます。その研修も、グリーゼに作ってほしいですね。
鈴木:
実践編を最初に開催したときは、あまり独創的なアイデアが出てこなかった印象でした。それをグリーゼに相談したら、2回目以降は、講師から「ぶっ飛んだアイデアを出してください」という呼びかけがあったので、生み出されるアイデアの幅が広がりました。こうした細かいオーダーにも応えてもらえたのがよかったです。
佐々木:
基礎編から実践編へとステップアップする流れはとても大切だと考えています。サステナビリティの社内浸透のためには、研修を1回受講して終わりではなく、サステナビリティへの意識を持ち続け、考え続けてもらう仕組みが必要だからです。全社員を対象として、継続的に開催する研修なので、講師との緊密な連携は欠かせません。
これまでに基礎編と実践編を実施してきた中で、時間配分や進行などの気になった点を相談すると、グリーゼはすぐに改善してくれました。回を重ねるごとに研修がスムーズに進むようになっているので、安心して任せられるパートナーだと感じています。今後もグリーゼと連携して、よりよい研修を実施していきたいです。
■会社概要
●社名 株式会社ユニリタ
●設立 1982年5月24日
●代表者 北野 裕行
●所在地 東京都港区港南2丁目15−1 品川インターシティA棟 29F
●事業内容 データ活用領域、ITシステム運用管理領域のパッケージソフトウェア開発・販売・サポートおよびソリューション、コンサルティングサービスの提供
●企業サイト https://www.unirita.co.jp/