
こんにちは。株式会社グリーゼの福田多美子です。
グリーゼは、企業の情報発信のお手伝いをしています。最近は、サステナビリティに関する情報発信のご相談も増えてきました。
サステナビリティ(Sustainability)とは、「持続可能性」という意味です。環境問題、社会問題が大きくなっている現代において、持続可能な社会を実現するために、企業の役割が重要になっています。
企業が、環境問題、社会問題をどのようにとらえて、どんな取り組みをしているかを発信するのが、サステナビリティページの役割になります。
参考)企業のサステナビリティページ
富士通株式会社: https://www.fujitsu.com/jp/about/csr/
株式会社ユニクロ: https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/
グリーゼでは、上場企業を中心にさまざまな業種のサステナビリティページを100ページ以上確認し、サステナビリティページにはどんなコンテンツがあり、どんな書き方をしているのかを調べました。
本コラムでは、サステナビリティページに盛り込まれるさまざまなコンテンツのなかから、最低限盛り込みたい5つのコンテンツについて、説明いたします。
■サステナビリティページに必要な5つのコンテンツ
1:トップメッセージ
2:基本方針と重点課題
3:具体的な取り組み
3-1:重点課題(マテリアリティ)と一致させる場合
3-2:ESGのカテゴリで分類する場合
3-3:独自のカテゴリで分類する場合
4:レポート(数値データなど)・資料
5:活動記録(継続的な更新)
■サステナビリティページを作ろう(まとめ)
サステナビリティページの冒頭には、トップメッセージを入れている企業が多いです。
トップメッセージは、次の要素で構成されます。
・代表取締役の氏名
・顔写真
・サステナビリティに関するメッセージ
サステナビリティページをトップメッセージからはじめることによって、「全社を挙げてサステナビリティに取り組んでいる」ということが視覚的にも伝わりやすくなります。
コーポレートサイトの「会社概要」「採用」などのページに既にトップメッセージが掲載されている場合でも、改めて、サステナビリティページにトップメッセージを入れましょう。
サステナビリティページのトップメッセージでは、環境問題、社会問題に対して、自社としてどのようなスタンスで取り組んでいくのか、サステナビリティだけをテーマに語ることがポイントです。
例)キューピーグループ
https://www.kewpie.com/sustainability/message/
サステナビリティに対する基本的な考え方を伝えます。自社が描く持続可能な社会のイメージ、ビジョンや、持続可能な社会を実現していくための構想、方針を整理しましょう。
例えばSoftbankでは、「考えるのは、300年後の人と地球」とタイトルを付け、「情報革命をリードする企業としての責任を果たしていく」と宣言しています。
https://group.softbank/sustainability/mission
サステナビリティビジョンの下には、ビジョンを実現していくために、どこに重点を置いて活動していくかを「重点課題(マテリアリティ)」として掲載しています。
環境問題、社会問題は多岐にわたりますので、自社で「すべての課題に対する取り組みを行う」ということは不可能です。自社として、どこに重点を置くのかを決めて、集中して取り組んでいくことが大事です。
https://group.softbank/sustainability/mission
重点課題の他に、以下もいっしょに掲載している企業が多いです。
・重点課題をどのように特定したか(特定プロセス)
・どんな体制で推進していくのか(サステナビリティ推進体制)
上場企業(特にグローバルな企業)のサステナビリティページに掲載されている項目が似通っているのは、国際基準のガイドラインがあるためです。
※国際基準のガイドラインの例
GRI(Global Reporting Initiative)
SASB(Sustainability Accounting Standards Board)
「具体的な取り組み」は、サステナビリティページのメインコンテンツになります。企業ごとに多種多様な取り組みがあるので、「具体的な取り組み」の書き方は、企業によって特徴が出るところです。
前述した企業の重点課題(マテリアリティ)ごとに、どんな取り組みを行っていくかを定めているケースがあります。
例えば、メルカリは「限りある資源を循環させ、より豊かな社会を」というコンセプトのもとで、次の5つの重点課題を定めています。
・循環型社会の実現
・循環型社会の実現に向けた文化醸成
・教育 ・地域活性化
・安心・安全・公正な取引環境の整備
・「コンプライアンス・リスクマネジメントの強化
https://about.mercari.com/sustainability/
そして、この重点課題ごとに、どんな取り組みを行っていくかを「取り組み施策」として具体的に記載しています。
例えば「循環型社会の実現」に向けた取り組みとして、以下の2つの取り組みを行っています。
・メルカリ事業及びメルペイ事業の継続的な成長
・リユース可能な梱包材の商品企画・展開(「メルカリエコパック」)
メルカリの事業そのものが、循環型社会の実現に向けた取り組みになっています。また、数百回も利用できるメルカリエコパックを開発し、広める活動もしています。
「具体的な取り組み」を、ESGのカテゴリに分類している企業は、多いです。
・環境(Environment)
地球温暖化、気候変動、生物多様性、海洋汚染、森林破壊、エネルギーマネジメントなどに関する取り組みは、環境(Environment)のカテゴリに入れます。
・社会(Social)
人材、ダイバーシティ、働き方、地域社会との連携などに関することは、社会(Social)のカテゴリに入れます。
・ガバナンス(Governance)
情報セキュリティ、リスクマネジメント、コンプライアンスなどに関することは、ガバナンス(Governance)のカテゴリに入れます。
例として、三菱地所グループのサステナビリティのページをご覧ください。サステナビリティ活動をESGで分類して掲載しています。
https://www.mec.co.jp/j/sustainability/
近年、従来の財務情報だけではなく、ESGに関する取り組み(非財務情報)も考慮した投資(ESG投資)の割合が増えています。
ESGという言葉は、投資家はもちろん、一般への認知度も高まっています。そのため、サステナビリティに対する取り組みを、ESGのカテゴリで分類する企業も多いようです。
ESGに加えて、「健康」というカテゴリを追加しているのは、ヤオコーグループです。スーパーマーケットチェーンで食品を扱う企業らしいカテゴリです。
10年後、20年後にも安全安心な農作物を提供できるようにと考えられた「ヤオコーファーム」という取り組みや、地産地消を目的とした地元野菜農家さんとの取り組みなどが掲載されています。
https://www.yaoko-net.com/sustainability/
ライオンのように、自社の特徴を出して「健康な生活習慣づくり」に重点を置いた分類もあります。「自社のビジネスで持続可能な社会に貢献していこう」という意思が感じられるカテゴリです。
https://www.lion.co.jp/ja/csr/
株式会社日立システムズでは、具体的な取り組みを、SDGsの項目と照らし合わせて掲載しています。
https://www.hitachi-systems.com/sustainability/management/sdgs/index.html
サステナビリティページのメインコンテンツとなる「具体的な取り組み」は、各社工夫をこらした見せ方をしていることがわかります。
サステナビリティに対する取り組みを掲載するだけではなく、取り組みの結果を継続的にレポートすることも大事です。取り組みの下に「ライブラリー・データ集」などのコーナーを設けて、さまざまな資料を公開している企業が多いです。
例えば、三菱地所グループでは、ESGで分類して、
E:環境関連データ
S:社会関連データ
G:ガバナンス関連データ
について、目標数値に対する毎年の達成度を掲載しています。
https://www.mec.co.jp/j/sustainability/activities/esg-data/
富士通株式会社では、サステナビリティトップの最後に「データ・資料」として、次のような項目を並べています。
-外部評価・表彰
-社会・環境データ
-第三者保証報告書
-GRIスタンダード/国際グローバル・コンパクト(GC)対象表
-サステナビリティ報告に関する考え方
https://www.fujitsu.com/jp/about/csr/
サステナビリティページを構成するさまざまなコンテンツのなかで、この活動記録は最も更新性の高いコンテンツです。活動記録を継続的に更新していくことによって、取り組みに対するリアリティが出ます。
素晴らしいビジョンを掲げることは、誰でもできるかもしれません。しかし、掲げたビジョンに向けて、日々活動していくことは、誰にでもできることではありません。できるだけ、活動記録を掲載するようにしましょう。
ベネッセホールディングスでは、重点課題(マテリアリティ)として掲げた5つの項目に合わせて、活動事例を掲載しています。社員の方の顔写真付きの記名記事として更新されているので、リアリティがあります。
https://blog.benesse.ne.jp/bh/ja/sustainability/activity/index.html
さらにベネッセホールディングスでは「サステナブルな社会へ」というオウンドメディアも更新しています。「サステナブルな社会へ」では、持続可能な社会に向けた日常的な活動を、SDGsの17の目標と照らし合わせながら更新しています。
https://www.benesse.co.jp/brand/
ユニクロでは、写真や動画での活動報告を行っています。ユニクロで行っているさまざまなサステナビリティ活動のなかから、「衣料品のリサイクル」に焦点を当てた活動報告になっています。ユニクロ従業員の方が、世界各地を訪問して、リサイクルで集めた衣料品がどのように使われているかを、たくさんの写真や動画でレポートしています。
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/archive/
いかがでしたか?
サステナビリティページを作る際は、次の5つのコンテンツを盛り込むように検討してみてください。
【サステナビリティページに必要な5つのコンテンツ】
1:トップメッセージ
2:基本方針と重点課題
3:具体的な取り組み
4:レポート(数値データなど)・資料
5:活動記録(継続的な更新)
2030年をゴールに設定したSDGs(持続可能な開発目標)も、残り10年。今後ますます企業のサステナビリティに関する情報発信が盛んになってきます。
国際的な市場調査会社である「ユーロモニターインターナショナル社」が発表した「2021年世界の消費者トレンドTOP10」によると、約70%の企業・有識者が「消費者のサステナビリティに対する関心の高まり」を指摘しています。
参考)2021年 世界の消費者トレンドTOP10
https://go.euromonitor.com/white-paper-EC-2021-Top-10-Global-Consumer-Trends-JP.html
また、ESG投資はヨーロッパが先行しているイメージをもっている方が多いかもしれませんが、日本でもESG投資の金額は年々増加しています。私たちの年金を預かる「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」でも、投資金額の100%がESG投資となっています。
このようなデータからも「サステナビリティな社会の実現に向けて取り組んでいる企業」が求められていることがわかります。
最初は、サステナビリティに対する取り組みを、一つ掲載するだけでもよいと思います。
サステナビリティページを作ることをきっかけにして、「企業として、持続可能な社会に向けてどのように考えるか」を社員全員で議論してみてはいかがでしょうか。
▼サステナビリティページに関するご相談も受け付けています
「SDGsコンサルティング(導入パック/運用パック)」
https://gliese.co.jp/service/sdgs.html