BtoB企業といえば「セールスパーソンが見込み客に対して営業し、仕事を受注する」といった営業スタイルが一般的でした。
しかしインターネットの普及により、一般消費者の購買行動はもちろん、企業の購買行動も大きく変化し、いまやBtoB企業もWebマーケティングが必須の時代となりました。
多くのBtoB企業が慌ててマーケティング部門を立ち上げ、リードジェネレーション(見込み客の獲得)までは行うものの、知見もリソースもないため、その先のリードナーチャリング(見込み客の育成)の方法や手順がわからずに悩んでいるという実態があります。
「知見もリソースもないBtoB企業は一体何から始めるべきなのか」
こうしたお悩みに答えるべく、今回、新人ライター堀田がグリーゼ会長江島に、知見やリソースのない企業がどのようにリードナーチャリングに取り組むべきなのかを聞きました。20年にわたり数々のBtoB企業のWebマーケティングを支援してきた江島ならではの視点には、一般的には語られない重要な要素が詰まっていました。
「リードナーチャリングは難しい」とお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
――はじめに、リードナーチャリングとはどのようなマーケティング手法なのか教えてください。
会長 江島(以下、江島):
リードナーチャリングは、「見込み客の育成」を図るマーケティング活動です。
前段階として「リードジェネレーション」が必要です。リードジェネレーションでは、見込み客の連絡先や情報を入手します。
BtoB企業の場合、オフラインでは展示会やイベント出展での名刺交換、オンラインでは顧客に役立つ資料を用意し、ダウンロードしてもらう際にメールアドレスを獲得する方法などがあります。
――リードジェネレーションで集めた見込み客を、リードナーチャリングで「育成」していくわけですね。具体的にどのような状態までもっていくのが理想でしょうか?
江島:
まず、リードジェネレーションで集めた見込み客は、購買行動を示すマーケティングファネルでは「認知」の状態にあたります。「認知」から、「興味関心」や「比較検討」などへ顧客の購買意欲を高めていくのがリードナーチャリングの役割です。
リードナーチャリングでは、メールや、オウンドメディア・ホワイトペーパー・動画などのコンテンツを利用して、見込み客の購買ステージを上げていきます。他にも、SNSやセミナー、リターゲティング広告などさまざまな手法があります。
――なぜ、今BtoB企業にリードナーチャリングが必要なのですか?
江島:
理由は大きく2つ挙げられます。
最大の理由は、「見込み客に対してセールスパーソンがアプローチし、クロージングする」という流れが一般的だったBtoB企業の手法が使えなくなってきたことにあります。インターネットの普及によりBtoB企業の購買行動が大きく変化しているためですね。
見込み客の約8割が営業担当者との商談時には、製品やサービスの絞り込みを完了しているという調査結果も出ています。
▼【調査結果発表】BtoB製品購入プロセスにおける Webマーケティングの重要性(2023年版)
https://gliese.co.jp/success/report/btob-web2023.html
もう1つの理由は、「購入までのプロセスが長く複雑化している」というBtoB企業の特徴があるからです。
――どういうことでしょうか。
江島:
BtoB企業は、BtoC企業に比べて単価の高い商材が多いため、意思決定には多くの人々が関わっています。そのため、見込み客であるBtoB企業が自社製品に興味関心をもち、比較検討するまでには長い道のりがあります。
この長い道のりに適切に寄り添い、商談先として自社を選んでもらう関係性を構築するのが、リードナーチャリングの役割です。
見込み客が「どこかに相談したい」と考えたタイミングに、自社を思い出してもらう関係性を築いておくために、BtoB企業のリードナーチャリングがもはや必要不可欠になっています。
――必要不可欠になっていると気づき、グリーゼに相談にこられる企業が多いとのことですね。
江島:
はい。実際に「リードナーチャリングの必要性はわかっているけれど、何から手を付ければよいかわからない」との相談が、現在多くの企業からグリーゼに寄せられています。それだけお困りの企業が多くいらっしゃるということですね。
――なぜ、BtoB企業はリードナーチャリングが苦手なのでしょうか?
江島:
もともと、多くのBtoB企業はマーケティングの部署がなく、Webマーケティングの知見が不足しています。これまでは、Webマーケティングの必要性に気づいていなかったからです。
顧客の購買行動の変化に気づくと、会社は急いで部署を立ち上げます。しかしマーケティング担当に任命したのは一人だけ、または数名だけという場合も多く、リソースもまったく足りていない状態です。
つまり、マーケティングに関する知見もリソースも足りていないことが、リードナーチャリングを苦手と感じる理由であると考えられます。
グリーゼに相談にくるマーケティング担当者は、実務経験がないことに対する不安や、社内に相談できる相手がいないことも困りごととして抱えている方が多いです。
―――では相談してきた企業に対して、どのようなアドバイスをされるのでしょうか。
江島:
グリーゼでは、リードナーチャリングの知見やリソースがない企業に対して、3つのステップを提案しています。同時に、注意してほしいポイントについてもお話しています。
――まずは、リードナーチャリングの知見やリソースがない企業に対して伝えている「これだけは注意してほしい」というポイントについて教えてください。
江島:
リードナーチャリングでまず話題に上がるのが「マーケティングオートメーション(MA)で自動化しよう」という話です。
知見やリソースがない分、システムを使って一気に自動化したいと夢を膨らませる企業は多いのですが、それは危険です。
「オートメーション」という名前からして、何でも自動化してくれそうだと感じてしまうのですが、導入すればすぐに動き出すわけではありません。リードをセグメントして、そのリードをどう引き上げていくのかといったシナリオを作ったり、適切なコンテンツを用意したりするのは人間の役割です。さまざまな指示や材料を人間が与えることによって、はじめてMAは動き出します。
つまり、MAはマーケターの仕事をすべて肩代わりしてくれるわけではなく、知見もリソースも整った企業だからこそ有効活用できるシステムです。知見もリソースもない企業は、「システムで自動化する」という発想は捨てて、小さなことから始めてほしいと考えています。まさに、「急がば回れ」ですね。
――江島さんの教えのおかげで「システムで自動化する」という発想を捨てることができました。では、リードナーチャリングはまず何から始めたらよいのでしょうか?
江島:
リードナーチャリングの中で、第一に取り組むべきは「メールマーケティング」であると考えています。
SNSやチャットが浸透しメールを読む人が減少していると言われることもありますが、ビジネスシーン、特に社外の人とのコミュニケーション手段は現在もメールが主流です。
しかもメールマーケティングは、リードナーチャリングのさまざまな手法の中でも、顧客に直接的にアプローチできる数少ない「プッシュ型」です。コンテンツを作ったり展示会に出展したり、セミナーを開催したりといった、顧客のほうから企業に接触してくれるのを待つ「プル型」と組み合わせることで、リードナーチャリングの効果を上げることもできます。
とはいえWebマーケティングの知見やリソースが少ない場合、メールマーケティングにも慣れていないことが多いでしょう。そのような企業には、次の3つのステップで取り組むことをおすすめします。
――それではさっそく、3つのステップの具体的な内容を教えてください。
江島:
まずは、すべてのリードに対して毎月1本のメールを送ることから始めて、メール配信に慣れていきましょう。
リードナーチャリングにおいて、メールを定期的に出し続けることは何より重要です。しかしメールを配信する行為に慣れていなければ、継続自体が難しいという企業が多いでしょう。
「ネタを考える」「メール文を作る」「メールをセットして配信する」「配信したメールを分析する」、これら一連の作業に慣れるためにも、まずは全配信から始めることをおすすめします。
――まさに「継続は力なり」ですね。メールの全配信に慣れたあとは、どういったステップに進んでいけばよいですか?
江島:
全配信の運用に慣れてくると、「この情報は、資料請求をしてくれた人だけに届けたい」とか「この情報は、展示会に参加してくれた人だけに届けたい」などと、対象者を絞る必要性に気付けるようになってきます。
その段階に進んだときに活用してほしいのは、分類した見込み客に対してメールを送信する「セグメントメール」です。
ターゲットを絞ることで、対象の顧客にとってより有益な情報を適切に届けることができます。
――いきなりターゲットを分類するのではなく、全配信に慣れてからセグメントメールに移行するのが肝なのですね。では、最終ステップではどういったメールに挑戦していけばよいでしょうか?
江島:
セグメントメールの運用に慣れたあとは、「ステップメール」にチャレンジしてほしいと考えています。
ステップメールは特定の行動を起こした顧客に対し、当日、2日後、1週間後など設定したスケジュールどおりに、メールを段階的に送信する方法です。
例えば「資料請求」という行動を起こした顧客に対して、当日はお礼メール、2日後は商品の詳細情報、1週間後には導入事例など、段階を踏んで情報を伝えていくことができます。
――段階ごとに送信するメールを分けることで、より親密なコミュニケーションを図るのですね。
江島:
その通りです。ステップメールを実施するにあたっては、顧客のニーズや行動についての仮説を立ててシナリオを作り、その上でメール文を作成するといった準備が必要です。その分、時間はかかりますが、一度いいシナリオができると見込み客の育成をスムーズに進められるので、メリットも大きい工程になります。
これまで、BtoB企業はリードナーチャリングにあまり手をつけてこなかったので、悩むのはむしろ当たり前のことです。リードナーチャリングを含む、Webマーケティング全般の相談にのれる相手を見つけて、一歩一歩進めることが成功のカギを握ります。
グリーゼは2000年の創業以来、多くの企業のWebマーケティングを支援してきたため、Webマーケティング全般の相談に乗ることができます。BtoB企業に対する支援実績も多く、企業の知見やリソースにあった方法で、リードナーチャリングを一から支援することが可能です。
まずはお問い合わせいただき、コミュニケーションをとっていただければ、グリーゼがどんな会社かわかっていただけると思います。
メール制作1本など、小さな依頼からでもよいので、ぜひ気軽に声をかけてください。