BtoB企業のWebマーケティングの取り組みが進み、リードジェネレーションやリードナーチャリングに力を入れるマーケターが増えています。
しかしマーケティング部門の仕事は営業部門に理解されにくく、リードを育成して営業に渡しても喜ばれないなど、苦労している方は多いかもしれません。
「マーケあっての営業」と言われるような、信頼されるマーケティング部門を目指すには、リードを獲得して育成するだけでなく、購買意欲の高いリードを選別する「リードクオリフィケーション」が必要です。
リードクオリフィケーションとはどのようなものなのか。今回は、新人ライター堀田が、グリーゼ会長江島に、商談成立数を増やすために大切なリードクオリフィケーションのポイントについて聞きました。
――最初に、企業のマーケティング担当に任命された人は、Webマーケティングについて、どのような取り組みをしていけばよいのかを教えてください。
江島:
まずは集客のためのコンテンツを準備するところから始まります。見込み客にWebサイトやオウンドメディアに来てもらい自社を知ってもらうことが目的です。そして集客した中からリードを獲得していく「リードジェネレーション」、獲得したリードを育てていく「リードナーチャリング」と続きます。
リードナーチャリングでは、購買動機が生まれたときに自社を第一想起してもらうため、さまざまな施策に取り組みます。リード育成の最終目的は、商談成立につなげることです。そのためには、リードを営業に渡し商談へと進めなければなりません。マーケティング担当者は、商談につながるリードを見つけ出すため、リードナーチャリングの次の工程となる「リードクオリフィケーション」に取り組む必要があります。
――「リードクオリフィケーション」は、どのような工程になるのでしょうか?
江島:
リードクオリフィケーションは、「確度の高いリード」を選別するプロセスです。確度の高いリードとは、購買意欲が高まり、いよいよ商品やサービスの購買を検討する段階に入ったリードのことを言います。購買意欲が高まった確度の高いリードを営業に渡すことができれば、あとは営業がクロージングを行うことで商談成立へとつなげる確率を高められます。
――従来はリードの獲得から育成、商談化までを営業担当者が実施していたかと思いますが、近年ではマーケティング担当者の役割が大きくなっているようです。その背景を教えてください。
江島:
もともとBtoB企業は、営業担当者がリードとコミュニケーションをとり、商談成立まで担当する流れが一般的でした。しかしインターネットの普及により、「リードが自分で情報収集や検討を行い、企業にコンタクトを取る」といった新しい購買行動が生まれました。
これまでのようにリードが検討段階に入ってからアプローチするのでは遅く、もっと早い段階でリードとの関係性を築き、自社を選んでもらえるような働きかけが必要になったのです。
BtoB企業の場合、そもそも検討から購買までの期間が長期化するという特徴があります。長期にわたり営業がフォローし続けることは難しいため、マーケティング部門を作って分業する流れが始まったと考えています。
また、各部門における専門性が高まってきた背景もあり、営業部門とマーケティング部門の役割はさらに明確化しています。マーケティング部門は確度の高いリードを営業に渡し、営業部門は確度の高いリードをクロージングするという、それぞれの役割を担うことが重要になっているのです。
――役割を担う上で、マーケティング部門に任命されたばかりのいわゆる「マーケ初心者」が陥りやすい失敗はありますか?
江島:
取り組みやすい目の前の仕事から手を付けてしまうところでしょうか。失敗というより「営業との溝が深まる原因」と言ったほうが正しいかもしれません。マーケティング部門の仕事は、集客してリードを獲得、育成、選別し、営業に渡すことです。初めてWebマーケティングに取り組むと、集客からの流れ通りに順を追って進めることが多いでしょう。決して間違いではありませんが、リードジェネレーションやリードナーチャリングに力を注いでも、営業には理解されにくいことが多いと思います。
――なぜでしょうか?
江島:
営業にとっては、「アクセス数が伸びた」「検索で上位表示された」などと聞いても、直接的に自分たちの商談成立にどう結び付くのかが想像しづらいからです。だからといって育成段階のリードを営業に渡しても、役に立たないと言われてしまいます。育成中のリードは「興味関心」や「比較検討」など購買ステージが混在している状態ですから、営業が目指す「商談成立」に直結しないリードが多いのです。まだ検討段階に入っていないリードを渡しても、営業を困らせてしまいます。
マーケティング側は、「リードの母数を増やせばそれだけ商談成立数も増やせるのでは?」と考えがちですが、営業側には「選別されていないリードを大量に渡されても、対応する数が増えるだけで結果が出ない」と捉えられてしまいます。このような状況では、営業部門とマーケティング部門の連携はうまく進みません。
――ではマーケティング部門が取り組むべき「リードクオリフィケーション」について、具体的に教えてください。
江島:
リードクオリフィケーションとは、リードナーチャリングで育成したリードの中から、検討意欲の高まった確度の高いリードを選別するプロセスのことです。BtoB企業の場合、BtoC企業のようにセールを行ったり、季節によって売れやすい時期があったりするわけではありません。リードの購買意欲が高まる時期を企業側がコントロールすることはできないので、「顧客の検討意欲が高まったタイミング」を判断するのが難しいという特徴があります。
仮説と検証を繰り返しながら、より精度の高い選別を行うことがマーケティング部門には求められます。
――「リードの購買意欲が高まった」と判断するために、マーケティング部門がすべきことはなんでしょうか。
江島:
「これは確度の高いリードだ」と確信を持てるような判断材料をそろえることです。具体的には、「検討が深まったタイミングでリードが知りたい情報は何なのか?」を考えていきます。
例えば、価格表や機能の比較表、アフターフォロー、導入後の支援といった情報を必要としているリードは確度が高いと言えるでしょう。しかし売りたい製品やサービスの性質によっても、「確度の高いリードが知りたい情報」というのは異なるかと思います。
――だからこそ、具体的に仮説を立てた上で検証し、判断材料を精査していくことが大切なのですね。
江島:
その通りです。マーケティング部門は、確度の高いリードが閲覧するページや情報を選別する。もしページや情報が足りなければ、新たなページやホワイトペーパーを用意することも必要です。
その上で、「ページを閲覧した」「ホワイトペーパーをダウンロードした」確度の高いリードを営業部門に渡す。これが、マーケティング部門に求められている工程です。
――リードクオリフィケーションを成功させるために、特に必要なことはなんでしょうか?
江島:
大きく2つのポイントがあると考えています。1つは「営業の意見を取り入れること」、もう1つは「営業に結果を見せ、信頼を得ること」です。
――営業の意見はどのように取り入れていけばよいのでしょうか。
江島:
「購買意欲が高まったリードの行動や心理」について考えるときは、営業と一緒に行うことをおすすめします。リードがどのような行動をとったときに「確度の高いリード」と言えるのか、確度の高いリードが欲しい資料はどういったものなのか、営業の意見を聞くことが重要です。
マーケティング部門の担当者は、直接顧客とは会わないことが多いと思いますので、やはり顧客との距離が近く、最も顧客を知っている営業の意見を取り入れることが有効です。
――確かに、営業の意見を聞くことは大事ですね。
江島:
最も重視したいのは、選別したリードが果たして本当に「営業が欲しいリードであるか?」といった点です。あとはクロージングするだけでOKと営業が判断できるようなリードを選別することが大切だと言えます。
営業の意見を聞きながら一緒に仕組みづくりをしていくことで、営業部門とマーケティング部門の間での認識の違いをなくすことにもつながります。
――続いてのポイントですが、営業から信頼を得るのはなかなか難しそうです。
江島:
マーケティング部門の仕事が営業部門に理解されにくいのは、営業にとってのゴールである「商談成立」から遠い位置にある集客やリードの獲得から順に始めようとするからだと感じています。
もちろん、リードジェネレーションもリードナーチャリングも、マーケティング部門にとっては大切な施策です。
しかし、営業との連携を図りたいのであれば、まずは営業にとってわかりやすい結果を出すための施策から優先して取り組むのが有効です。結果を出すことで営業部門にマーケティングの仕事を理解してもらうことができ、営業部門からの信頼を得られます。これはマーケティングの仕事をスムーズに進めるうえでも重要なポイントであると考えています。
――「営業にとってわかりやすい結果」を出すためには、具体的に何から始めればよいでしょうか。
江島:
例えば、リードクオリフィケーションの判断材料となるホワイトペーパーの作成から取り組むといったイメージです。
「確度の高いリード」が必要とするであろうホワイトペーパーをリードがダウンロードしたら、すかさずそのリードを営業部門に渡す。そして、マーケティング部門から営業部門に渡ったリードがスムーズに商談成立へとつながった実績が積み重なれば、マーケティング部門への信頼を勝ち取ることができるでしょう。
BtoB企業の商談成立数を増やすには、マーケティング部門が営業部門の協力を仰ぎながら、リードクオリフィケーションを行うことが有効です。
とはいえ、マーケティング部門が立ち上がったばかりのBtoB企業がいきなりリードクオリフィケーションを成功させるのは容易ではありません。
グリーゼでは、リードクオリフィケーションに必要なダウンロード資料やページの作成はもちろん、Webマーケティング全般のご相談を承っています。
リードクオリフィケーションを成功させ、マーケティングの仕事をスムーズに進めたいとお考えの方は、2000年の創業以来、多くの企業のWebマーケティングを支援してきたグリーゼにぜひお問い合わせください。