こんにちは。株式会社グリーゼの福田多美子です。
「外注か内製か? BtoB企業のコンテンツ制作の舞台裏」というテーマで書くコラムの後編です。
※前編の「外注か内製か? メリットとデメリットを徹底検証」は、こちらからお読みください。
今回の後編では、「なぜ、BtoB企業のコンテンツ制作は、内製にシフトしたほうがよいのか」、さらに「内製化を進めるための3つのフェーズ」について考えていきたいと思います。
多くのBtoB企業が、コンテンツマーケティングに力を入れています。
コンテンツマーケティングを行う目的はさまざまですが、リード獲得やコンバージョン率を高めるという目的を達成するためには、掲載するコンテンツの内容の深さ、オリジナル性が肝となります。
どこででも読めるような「内容の浅いコンテンツ」ではなく、「ここでしか読めないコンテンツ」、「専門性の高いコンテンツ」を掲載していくことが重要なのです。
前回のコラムで、外注、内製のメリット・デメリットを以下の表にまとめました。このなかで、赤字にしている「専門知識が豊富」という内製のメリットは、外注でカバーすることが最も難しい点だと思います。
私はこの1点において、内製化を推奨したいと考えています。
メリット | デメリット | |
外注 | ✔ 社内のリソースを軽減できる ✔ プロのノウハウを吸収できる |
✔ コミュニケーションに時間がかかる ✔ 外注先に、専門知識が少ない ✔ 社内にノウハウを蓄積できない |
内製 | ✔ コミュニケーションが円滑 ✔ 専門知識が豊富 ✔ ノウハウを蓄積できる |
✔ リソースの確保が必要 ✔ コンテンツ制作のノウハウがない |
BtoB企業のコンテンツマーケティングを成功に導くためには、他社とは違う情報、自社でしか書けないことを発信していくことが重要です。
そのためには、社内の人間が「当事者として書くコラム」が不可欠だと思うのです。
コンテンツマーケティングの内製化を進める際は、次の3つのフェーズを設け、フェーズごとに進め方を検討していきましょう。
立ち上げフェーズは、コンテンツ制作のプロフェッショナル(外注先)と組んで行います。徐々に社内で担当できる部分を増やしていきながら、内製化を進めていきましょう。
ここでは、各フェーズでのポイントを説明していきます。
外注先と一緒にコンテンツマーケティングをスタートする理由は、「プロのノウハウを吸収する」ためです。
外注先には、あらかじめ「将来的には、コンテンツ制作を内製で行いたい。ひとり立ちできるようになるまで、コンテンツ制作のノウハウを教育してほしい」とストレートにお願いしておきましょう。
さらに以下を決めておくと効率的です。
「外注期間をどのくらいの期間に設定するか」は、「どんなことを行いたいか」によって変わります。
例1)作りたいコンテンツは「事例」のみ、月に1本更新する場合
「事例」の企画・設計から、制作までのひととおりの作業を1~2本、外注先が中心になって行います。期間としては、最短で2~3ヵ月となります。
例2)プランニング(ペルソナ設計、カスタマージャーニーマップ検討など)からスタートし、オウンドメディアを立ち上げる場合
「プランニングフェーズ」だけでも数ヵ月は必要になります。掲載するコンテンツが、コラム、事例、調査レポートなどと種類が多くなる場合は、それぞれのコンテンツで1~2本、企画・設計から制作までを、外注先といっしょに行います。さらに検証、改善に至るまでのPDCAをひととおりまわすところまで含め、1年以上の外注期間が必要です。
外注先には、コンテンツを作ってもらうだけではなく、コンテンツの作り方、さらにはコンテンツマーケティングの進め方を教えてもらいます。
外注先のサポートがなくなっても「コンテンツ制作の制作/運用」が続けられるように、必要な資料、ドキュメントを洗い出し、立ち上げフェーズの期間に整えておきましょう。
例えば、取材原稿を作る場合、ライターは取材当日までに、リサーチをしたり、インタビューのためのヒアリングシートを作ったりと準備を行います。「どういうリサーチをするのか」、「どういうヒアリングシートを作るのか」ということは、コンテンツ制作のノウハウになります。
「内製化するために必要な資料(ガイドラインなど)」については、外注先と協力して、立ち上げフェーズにしっかりと作り上げておきましょう。
引き継ぎフェーズは、外注先が行っていた業務を、社内のスタッフに「作業」として渡していく期間です。立ち上げフェーズで作った「ガイドライン」などのドキュメントにしがたって、コンテン制作のひととおりの作業を行っていきます。
例えば、取材原稿を制作する場合、以下のような「作業」があります。
・インタビュー前にヒアリングシートを作る
・インタビューを実施する
・原稿を書く
・社内チェックを行い、修正する
・インタビュー先に原稿をチェックしてもらって、さらに修正する
引き継ぎフェーズでは、以下の2つの点に注意しながら「運用フェーズ」への移行を進めましょう。
まずは「社内スタッフが制作するコンテンツ」を決めましょう。例えば、ある企業では、メールを中心に内製化を進めたいという希望がありました。
引き継ぎフェーズでは、
・ナーチャリングのメールを3本
・メールマガジンを3本
と決めて、引き継ぎを行いました。
制作するコンテンツの種類が多い場合は、
・調査レポート1本
・導入事例1本
・コラム1本
などと決めるのもよいでしょう。
引き継ぎフェーズを期間で決めるのではなく、引き継ぎ期間に制作するコンテンツの種類と本数で決めることが大事です。期間を決めてしまうと、「期間中に対象のコンテンツが完成まで至らなかった」などの事象が起こってしまうからです。
引き継ぎフェーズでは、さまざまなアドバイスを受け、原稿に対する添削(原稿に対するチェック)を繰り返し受けることになります。
その際、アドバイスや添削をそのまま受け入れるのではなく、「なぜそのアドバイスなのか」「なぜその添削が入ったのか」を確認するようにしましょう。
添削は、添削する人の主観で行われているわけではありません。「対象読者の知識レベルと合っていないから」「ガイドラインで決めたルールから外れているから」「制作するコンテンツの目的からずれてしまっているから」など、ひとつひとつの添削に、必ず理由があります。
引き継ぎを受けるスタッフは、内製化したときのリーダー的な立場を引き受けるつもりで引き継ぎを受けましょう。次は、他のスタッフが書いた原稿を、チェックする立場になるのです。
コンテンツマーケティングは、継続的にコンテンツを作り、Webサイトにアップして、効果を検証していくという地道な仕事です。長期的な取り組みが必要です。
コンテンツ制作を続け成果を出していくために、次のことを決めておきましょう。
内製でしっかりと取り組んでいくため、コンテンツ制作チームを作りましょう。
コンテンツマーケティング専属の部署があるという企業もありますが、多くの場合「他の仕事との兼務で、コンテンツも担当している」というケースが多いでしょう。
各部署から選抜されたメンバーで、プロジェクトチームを作ることをおすすめします。編集長を決め、リーダーシップをとれる体制が理想的です。
弊社のクライアントでは、サービス部門担当者が中心となり、営業部門、企画部門、システム部門からメンバーを集めてコンテンツマーケティングに取り組んでいる例もあります。
コンテンツは、企業からお客様に情報を伝えるための、重要かつ戦略的なツールです。できるだけ多くのメンバーを巻き込み、全社的に取り組むべきだと思います。
コンテンツ制作の内製化を行う場合、最初はうまく運用できず「思ったようにコンテンツが作れない」という事態に陥ってしまうかもしれません。他の仕事を抱えているメンバーが多い体制の場合、自社のコンテンツを作るという仕事は、後回しになってしまうこともあるでしょう。
コンテンツ制作を継続するために、少し余裕をもったスケジュールを作りましょう。スケジュールを守れるように、編集長を中心とした編集会議を定期的に開催(例:月に1回)している企業も多いです。編集会議では、進捗管理、品質管理、効果検証を行いながら、次の戦略を立てます。迷ったときには、立ち上げフェーズで作ったガイドライン等を活用します。
(編集長の役割については、別途、コラムに書きたいと思っています)
最後に・・・
「外注か内製か? BtoB企業のコンテンツ制作の舞台裏」と題して、前編、後編と2回にわたりコラムをお届けしました。
私は、お客様に選ばれる企業になるためには、自分の仕事、自分たちのサービスのことを、「自分の言葉で発信すること」が、重要なのではないかと思っています。
だからこそ、「社内にコンテンツ制作チームがあり、タイムリーに内容の深い情報発信ができる体制を整えていること自体」が、「コンテンツマーケティングに取り組んでいること」以上に、企業の強み、財産になると信じています。