
マーケティング・オートメーション(以下、MA)の基本機能は、どの製品もほとんど同じです。しかし、細かく見ていくと、それぞれの製品ごとに特性があります。
本記事では、日本シェアNo.1のMAであるPardotでできることのうち、お勧めの機能3つ、および、使い方に少し注意が必要な機能3つをご紹介します。
■1:Pardotでできること ~ お勧めの機能 3選 ~
(1) Sales Cloud(セールスクラウド)とのシームレスな連携機能
(2) ページアクション機能
(3) 完了アクション機能
■2:Pardotでできること ~ 使い方に少し注意が必要な機能 3選 ~
(1)スコアリング機能
(2)オートメーション機能
(3)シナリオの分岐機能
Sales Cloud(セールスクラウド)とは、Salesforce社が提供する、世界トップシェアの営業支援(SFA)&顧客管理(CRM)システム。
Sales Cloudとノンプログラムで連携できるMAはいくつかありますが、なんといってもPardotは、Sales Cloudと同じSalesforce社の製品ですから、「連携できるレベル」が違います。
Sales Cloudの画面から、まるでSales Cloudの中の一機能であるかのようにPardotを起動させることができますし、Sales CloudとPardotの間でやり取りできる情報も、年を追うごとに増えています。
※株式会社グリーゼのSales Cloudのメニューバー
「Sales Cloudを既に導入している」あるいは「Sales Cloudの導入が既に決定していて、MAを選定中」という企業には、Pardot一択と言ってもいいのではないでしょうか。
「ページアクション」とは、プロスペクト(メールアドレスが判明している見込み客)が、あるWebページを訪問した際に、発動する命令をあらかじめ設定しておくことができる機能です。
当社では、カスタマージャーニーマップを描く際に、「ページアクション」によって、購買ステージを判定するという設計にすることが多いです。その理由は、「プロスペクト」の行動のうち、「どのページを見ているか」が、プロスペクトの温度感を計るのに一番適していると考えているからです。
① プロスペクトが、「価格」のページを訪問
=購買ステージが、「比較・検討ステージ」である可能性が高い
② 「担当営業に通知を送る」というページアクションが発動
① プロスペクトが、あるカテゴリの製品ページを何度も訪問
=購買ステージが、「「興味・関心ステージ」である可能性が高い
② 特定のカテゴリに関するスコアに点数を加算(※)というページアクションが発動
③ 「カテゴリスコアが閾値を超えたプロスペクトには、個別相談会の案内メールを送る」などのオートメーションプログラムにつなげることができる
※カテゴリごとにスコアリングする機能が使えるのは、Pardot Plus Edition、Advanced Edition、Premium Editionのみ
「フォーム」や「メール」などに付随する機能で、プロスペクトが、ある行動を起こしたことをトリガーに、いくつかの命令を発動させることができるという機能です。
下記は、プロスペクトがお問い合わせフォームからの送信を完了したときに発動される「完了アクション」の一例です。
上記の例では、「お問い合わせフォームからの送信」をトリガーに
・プロスペクトのレコードに、「お問い合わせあり」という情報を書き込む
・自動返信メールを送信する
・担当営業に通知する
など、複数の命令を発動させています。
この「完了アクション」という機能は、Pardot独特のものであり、最もよく使われる機能のひとつではないかと思います。
スコアリング機能とは、見込み客が何か行動をするごとに、点数を加算していくという機能です。
Pardotはもちろん、ほとんどのMAに搭載されていて、導入前のデモンストレーションで「行動を点数化することで、見込み客がCOLDなのかWARMなのかHOTなのかを判別できる」と説明され、「スコアリングができれば、インサイドセールスが効率化できる!この機能はぜひ欲しい」と皆さんが思う機能のひとつではないかと思います。
しかし実は、スコアリング機能は、「意外と使えなかった」という感想を聞くことが多い機能でもあります。
なぜかというと、全ての行動(ページ訪問、メールの開封・クリックなど)に対して点数が加算され続けていくため、たとえば下記のようなことが起こるからです。
◎Aさん スコア500点
Aさんは勉強家で、御社が発行しているお役立ちメルマガを毎回開封・クリックし、そこからリンクしている様々なWebコラムも読んでいるので、どんどんスコアが加算されている。
御社に業務を発注する気は全くない。
◎Bさん スコア300点
Bさんは、3年前に御社への業務発注を考えていたので、そのときに御社のWebサイトを何度も訪問していた。
結局、別の事業者に発注したので、現在は御社には全く関心がない。
◎Cさん スコア50点
Cさんは、ちょうど業者選定を始めたばかり。
御社のDというサービスのページを何度も訪問して、候補に入れるべきかどうかを検討中。
上記の場合、スコアだけで見ると、
Aさん HOT > Bさん WARM > Cさん COLD
のように見えてしまいますが、本当はマーケティング的に重視しなければならないのは、Cさんですよね。
Cさんが、「現在アクティブな見込み客」であり、かつ「Dというサービスを検討中である」と見抜くためには、単純な加算式のスコアリング機能ではなく、
① 一定の期間、行動がなかったら、スコアをクリアするような機能
② どのサービスに関心があるのかを、カテゴリや製品ごとのスコアで把握するような機能
が、必要になります。
Pardotでは、
① については、スコアクリアのルールを設定することで実現可能
② については、Plusエディション以上で、スコアリングカテゴリという機能が使用できます。
マーケティング・オートメーションというだけあって、どのMAにもオートメーション(自動化処理)機能は、豊富に搭載されています。
これも、「いままで人間がいちいち手動でやっていたことを、自動化できるなんて素晴らしい!この機能はぜひ欲しい」と、導入前に皆さんが思うもののひとつではないかと思います。
しかし、自分があずかり知らぬところで、見込み客とのコミュニケーションが勝手に動いているのは、リスキーなことでもあります。
具体的な例を、ご紹介しましょう。
〇4月1日:プロスペクトが、あるカタログをダウンロード。
完了アクションで、インサイドセールスグループに通知。
〇4月1日:「カタログをダウンロードした人に、フォローメールを計3通送る」というオートメーションプログラムが発動
〇4月1日:カタログをダウンロードしたプロスペクトに、インサイドセールスが電話。アポとり成功!
〇4月2日:フォローメール1通目「ダウンロードした資料はいかがでしたか?」が自動配信される
〇4月5日:営業が訪問。詳しい製品説明やデモンストレーションを実施
〇4月6日:フォローメール2通目「ぜひ一度、デモンストレーションをご覧ください」が自動配信される
↓↓↓
営業のコミュニケーションと、メールのコミュニケーションのつじつまが合わなくなる!
上記のようなことが起こってしまう可能性があるために、セールスパーソンの中には、「自分が担当しているお客様に、勝手にメールを送りつけないでほしい」と言われる方もいらっしゃいます。
一旦オートメーションプログラムを設定してしまうと、「いつ、誰に、どんなメールが自動で送られるのか」がわからなくなってしまうので、
・メールの自動送信は、最低限にすること(配信前に、営業部署が配信先リストを確認するという運用の方が望ましい場合もあります)
・自動送信設定をする場合には、万が一別ルートからのコミュニケーションが発生していても、食い違いが起こらないようなメール内容にすること
をお勧めします。
Pardotの「エンゲージメントスタジオ」では、たくさんの分岐条件を使って、複雑なコミュニケーションシナリオを描くことが可能です。
しかし、分岐の多い複雑なシナリオを設定してしまうと、ますます「いつ、誰に、どんなメールが自動で送られるのか」がわからなくなってしまいます。
しかも、分岐が細かくなればなるほど、それぞれの分岐先に流れていくプロスペクト数が非常に少なくなるので、設計した分岐条件が正しかったのか・分岐後のコミュニケーションが正しかったのかを検証することが、難しくなってしまいます。
上記のように、複雑なコミュニケーションシナリオを描くこともPardotの機能としては可能ですが、運用では、できるだけシンプルな、分岐の少ないシナリオを設計することをお勧めします。
・・・いかがでしたか?
この記事に記載したことは、「長期にわたって、Pardotを運用していて」かつ、「お客様へのご支援で他社のMAも複数扱っている」当社(Pardotを日本で3番目に導入した会社らしいですよ!)だからこそお伝えできる知見の、ごく一部です。
「Pardotを導入しようか迷っている」
「Pardotを導入したものの、活用できていない」
という方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
Pardotコンサルタント資格保有者が、お待ちしております!
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