
中学校の英語の授業で、ほとんどの日本人にはお馴染みの受身形(受動態)。日本人は、英語を書く際に、意識せずに使ってしまう傾向があるようです。
ところが・・・ご存知でしたか? 英語圏のネイティブスピーカーの間では、「受身形は、なるべく使わない方がよい」とされています。
「能動形で文章を書く方が、受身形で書くよりも自然である」という暗黙の了解が、存在しているのです。
その理由は、「能動形でも書くことができる文章を、受身形で書く」ということが、実は書き手の自信のなさや曖昧さを露呈してしまうからなのです。
日本人は、ただでさえ、海外でのセミナーや会議などの際に、「受身で、あまり進んで発言や質問をしない」という印象を持たれてしまっています。
せめて、文章くらいは、ビジネスパーソンとしての自信や積極性が伝わるものにしたいですね。
そのためには、受身形をどのように書き換えればいいのでしょうか?
論より証拠。 以下の各例文で、検証してみることにしましょう。
受身形: Robert was highly expected by the project team members.
能動形: Project team members had high expectations for Robert.
"期待をかけられていた"という箇所だけを見るとつい受身形で言い表したくなりますが、ロバートとプロジェクトチームメンバーとを比べた場合、期待をかけているのはロバートではなく、プロジェクトチームメンバーだということがわかります。
つまり本文中での主要動作主は、チームメンバーになります。
ですので、動作主であるプロジェクトチームメンバーを主語にした英文を作る方が、ロバートを主語にして受身形で書くよりも英文としては自然であり、本文の意味するところも、よりストレートに伝わりやすくなります。
受身形: I was said by Lisa that she has never received her score anything but A by her schools.
能動形: Lisa said to me, "Not even my schools gave me anything but score A!"
この英文では、"I was said" から始まるような受身形が使われていますが、それはきわめて不自然で、まったく英語らしくありません。
どのような書き方が英語らしいのか、それともそうではないのかを見極めるのは日本人にとっては決して簡単ではないのですが、少なくとも「受身形で書かれた英語は、能動形の英語と比べてみると英語らしくない書き方に映る確率が非常に高い」ということだけは、皆様の記憶に留めておいていただきたいと思います。
受身形: That novel was written by Charles Dickens.
能動形: Charles Dickens wrote that novel.
この2つの英文を比べてみると、やはり動作主であるチャールズ・ディッケンスが主語にくる方が、より自然な英文になります。
能動形は受身形と比べてシンプルでストレートで、しかもセンテンスが短めにさえなります。
人は、自信があるときは、メッセージをシンプルでストレートに伝えようとしますが、逆に自信がないときは、オブラートで包んだような、歯切れの悪い言い方をしがちですよね。
受身形は、まさにそのような曖昧さを含む表現なのです。
以上は、日本人的な英語の書き方から脱却してより英語らしい英文ライティングをするための数あるコツ(Ropes)の中のひとつです。
まずは、受身形はできるだけ使わないように心がけてみてください。
このような「英語らしい英文ライティング」のコツを、8月6日(火)18時からの英文ビジネスメールセミナーの中で皆様に随時ご伝授してまいりたいと思います。
セミナー会場は、JR東京駅八重洲中央口から京橋方面に向かって徒歩で6分ほどの貸し会議室になります。お時間のつく方はぜひともご参加いただけますよう、皆様のお越しを心からお待ちしております。
※本記事は、2019年7月時点のものです。
【筆者紹介】
Ken Sakai(酒井謙吉)
Pacific Dreams,Inc.代表 国際人事コンサルタント
信州大学卒。1987年渡米。三菱シリコンアメリカ(現SUMCO USA)社勤務。1996年に退社後、Pacific Dreams, Inc.を設立。在米日系企業ならびに米国企業のクライアントを対象に、人事管理コンサルティング・マーケティングと異文化コミュニケーションのノウハウを提供。
また、全米各地で、毎月日系企業向けの人事セミナーを精力的に展開している。