
こんにちは。株式会社グリーゼの福田多美子です。
新型コロナウイルス感染症の影響によって、急速にひろまったテレワーク。ネットには「コロナ疲れ」「コロナ鬱」「コロナストレス」などの言葉も目立ってきました。
長年、通勤するスタイルで働いてきた私の友人は、日ごろ「テレワークがしたい。テレワークに憧れる」と言っていたのにも関わらず、テレワークをはじめて2週間ほどで「テレワークは辛い。疲れる。向いていない」と、こぼしています。
ある知人はテレワークになって1週間もたたないうちに、上司に電話し「ひとりで仕事をするのは寂しい。仕事もうまく進められないので会社に行きたい」と号泣してしまったそうです。
テレワークによって移動時間がなくなると、肉体的、物理的には楽になります。ところがテレワークが長期化してくると、精神的、心理的にストレスが高まり、場合によっては病気になってしまうケースもあるようです。
突然、半強制的にスタートしたテレワーク。十分な準備もできないままテレワークに突入したという企業が多いのが実情でしょう。だからといって、準備不足を言い訳に、仕事の質やスピードを落とすことはできません。スタッフ同士精神的な安定を保ち、チームとしてのパフォーマンスを下げないようにしたいものです。
グリーゼは、本社は世田谷区にありますが、ほぼ全員がテレワークスタイルで仕事を行っています。ひとりでまわせる仕事は少なく、基本的にはプロジェクトチームを組んで仕事を行います。メンバー同士のコミュニケーションについては、これまでも、いろいろなことを試してきました。大掛かりなテレワーク用のシステムを導入しようとしたこともあります。
今回は、グリーゼ20年のテレワークを振り返り、システム等を利用しなくてもできる、テレワークでのコミュニケーション方法をご紹介します。
1:失敗例:インターネット会話ツールでの、つなぎっぱなしのコミュニケーション
2:成功例:朝礼と終礼による、1日2回の定期コミュニケーション
3:成功例:「good & new」による、チーム活性化コミュニケーション
友人(某企業部長)は、テレワークでのコミュニケーションとして、インターネット会話ツールをつなぎっぱなしにして、部下に「いつでも気軽に声をかけていいよ」と言っているそうです。「管理職の責任として、このくらいしないと」と語っていたのですが、これは注意が必要です。
弊社でも、以前「skype」を使っていて「いつでも声をかけていいよ」のスタイルをとっていました。たくさんのプロジェクトがあり、多くのメンバーが関わっていたので、この方法が良いと思っていたのです。
・ツールをつなぎっぱなしにしてお互いが「オン(稼働中)」になっていると「一緒に働いている感」「一体感」が感じられる
・「ちょっといいですか?」と気軽に声をかけることができ、気になったことをすぐに解決できる(仕事がスピーディーに進む)
・メールで書くと伝えにくいニュアンスも、音声通話に切り替えることで伝えやすくなる
最初はうまく活用できていたのですが、徐々に弊害が出てきました。
・人によっては、ひとつの質問から、次々に話が膨らんでしまい、会話に長時間費やしてしまう
・仕事以外のおしゃべりに発展してしまうことがある
・突然「ちょっといいですか」と割り込まれるので、声をかけられる側からすると「集中力が途切れる、仕事が中断してしまう」など不満を感じる
うまく使えば、仕事を効率化できる手段になるのだと思います。ただ私の場合は、「skype」を使った「つなぎっぱなしのコミュニケーション」は、うまく運用できませんでした。活用する場合は、ルール決めが必要です。
うまくいったコミュニケーション方法のひとつめは、朝礼と終礼です。仕事をスタートするときに「朝礼メール」を流し、仕事を終えるときに「終礼メール」を流すというシンプルなものです。
実際には、今はバックログというプロジェクト管理ツールを使っていますが、以前はメーリングリストで行っていました。ツールは何でもよいと思っています。
朝礼メールは、その日の予定を箇条書きにして書き記します。終礼メールで各項目について「終わった」「終わらなかった」または「どのくらい終わったか」を記入して流します。
例えば、こんな朝礼を書き・・・
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5月8日朝礼
□ABCプロジェクトの会議資料作成
□〇〇さんの原稿チェック
□株式会社XYZ様用提案書作成
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終礼で、終わった項目の□を■に変更します。終わらなかったものは▲にするなどして、進捗をメモしておきます。
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5月8日終礼
■ABCプロジェクトの会議資料作成
■〇〇さんの原稿チェック
▲株式会社XYZ様用提案書作成→明日完成させる予定
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書き方は自由です。その日の予定だけ書いている人もいますし、少し先の予定やTODOを下にずらっと書いている人もいます。
テレワークでは、お互いの姿が見えません。「メールが流れているから仕事をはじめたのかな?」と想像したり、「きょうは1日気配がなかったけど大丈夫かな?」などと心配したりすることもあるでしょう。朝礼メールと終礼メールを流すことをルールにしておけば、そんな不安から解消されます。
またテレワークでありがちな「朝からつい、だらだらしてしまった」「メール対応で半日終わってしまった」などという問題も解決できます。オンとオフを切り替えて、仕事の優先順位を決めるためにも、朝礼、終礼は役立ちます。
朝礼、終礼という1日2回のコミュニケーションは、チームメンバーと「ちょうどいい距離感」を保てるコミュニケーション方法だと思っています。
弊社のテレワークは、「朝礼」ではじまり「終礼」で終わります。朝礼も終礼も業務連絡がメインですが、冒頭にちょっとした一言を書くようにしています。このちょっとした一言が、社内のコミュニケーションに役立っていると感じます。
以前は、「good & new」という欄を設け、全員毎日1つ「good & new」を書くことを必須にしていました。
「good & new」(グッドアンドニュー)とは、アメリカの教育学者ピーター・クライン氏が開発した組織活性化の手法です。 good(よかったこと)またはnew(新しく発見したこと)をお互いに発表し合うことによって、ポジティブな雰囲気が生まれ、組織やチームが活性化するという考え方です。
私がはじめて「good & new」に出会ったのは、あるセミナーの自己紹介のときでした。グループワークの多いセミナーだったので、この「good & new」がちょうどいいアイスブレイクになり、グループでの会話が円滑になりました。
テレワークの場合は、こんな感じで行います。
1. 朝礼メールの冒頭に「good & new」と項目を書き、良かったことや新しいことを1~2行程度(できるだけ簡単に)で書く これだけです。
good & newの書き方例)
good:駅前の花がきれいだった
good:久しぶりに実家に電話して、父の声を聞いた
good:出社したら机に「昨日は資料作りの手伝いをありがとう」とメモが置いてあった
new:新しいジャケットを初めて着用。気分がいいな~
new:英単語のアプリを入れた。きょうからがんばってみる
簡単なルールにすることが、継続の秘訣です。長い文で書こうとしたり、しっかりと相手に伝えようとしたりすると苦痛になります。誰かの「good & new」にコメントするのも任意にします。単純なルールにして、続けることを目標にするのです。
グリーゼでは、以前「good & new」を必須にしていました。今は「good & new」というルールにとらわれずに、朝礼メールに各自ちょっとしたコメントを書き込むことが習慣化されています。
こんな単純なことですが、私はたくさんのメリットを感じています。
・日常のささやかなことを「good」や「new」として取り上げることによって、日常を見直し、自分自身が前向きな気持ちになれる
・他のメンバーの「good & new」を見ることによって、共感したり感動したりでき、ポジティブな気持ちになれる
・他のメンバーの考え方や生活の一部を知り、親しみがわき仲良くなれる
ただし、人によっては「good & new」が負担になるケースもあります。弊社でも過去に「書くことが見つけられない」「こんなことを書いたら、こんなふうに思われないか不安になる」という理由で「書けません」と申し出た人がいました。
コミュニケーションのつもりが、コミュニケーションの妨げになってしまうこともありますので、ちょっと気にしておいてください。
最後に・・・
20年のテレワークの経験を振り返って、社内のコミュニケーションを円滑に行うことが、テレワークスタイルで仕事を進めるために最も重要なことだと確信しています。
また、コミュニケーションをとる方法は、簡単な取り組みであればあるほど効果的で、みんなで継続できるということも実感しています。
新型コロナウイルス感染症は、おそらく長引きます。これからもさまざまな変化、試練が発生するかもしれません。ひとつひとつの変化、課題に対して、ひとりで立ち向かうのではなく、チーム一丸となって取り組めるように、テレワークスタイルでの社内コミュニケーションについて、検討してみてはいかがでしょうか?
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